ヒナちゃんへ

 なにか文章を書きたいとき村上春樹を読むと言葉がスラスラ出てくるからいいんだよ。という意見には完全に賛成できた。おれもそうだ。村上春樹を10ページほど繰ると、不思議と書きたかったようなことを思い出す。他にもこういった作家はいる。ただ村上春樹の場合それが抜群に効く。スマートドラッグみたいな感じだ。

 それ以外に村上春樹には、なにも求めていない。好きでも嫌いでもない、いや、少しだけ嫌いな部類に入る。なぜかというと主人公が銃で撃ち抜かれたり、エンジンを付けた瞬間にスポーツカーが爆破されたりしなくて退屈だからだ。あとは女がゴリラに攫われたりもなければ一瞬で大気圏まで飛んで一瞬で地球を一周したりもしない。

 というかおれにはもっと読むべき本がたくさんある。余地としてはかなり残されている。

 先週携帯が壊れた。3年間、1日も肌身離さず画面をスクロールし続けていればそりゃ基盤も焼け切るだろう。それからすぐに、電話番号の認証を得られないとLINEやメールが使えないし、音楽もきけないことがわかった。だが、どうしようもない。だれかに愚痴をこぼそうにも、iPhoneの電源は入らないからだ。

 それからまたずっと気が済むまで酒を飲んだ。残念ながら今回はこんな具合で話が進んでいく。他人に借りた携帯で文章をフリックするのでは、あまりやる気が沸かないのだ。そう、それからずっと酒を飲んだ。誰かに呼ばれれば髪を洗って家を飛び出し、呼ばれなければ髪を洗わずに家を飛び出した。

 携帯が使えないというのはひどく気分がいいものだ。誰からも電話がかかってこないからだ。電話は嫌な気分になる。相手がおれになにか用事がある場合がほとんどだからだ。そしてそれにはおおよその場合期日や締め切りが設定されていて、おれはそれを受けるかどうかの選択をその時点で行わなければいけない。たとえ寝起きだとしてもポルノを観ていてもそうだ。ポルノを漁ってるときに電話をかけてくる人間は最低だ。

 どうしてそんな非道ができる？おれは見たくもない裸と陰毛を見てジャンクフードみたいな射精をしたいだけだ。それがおれに残されたわずかな投企なのだ。身体と精神を繋ぎ止める手段なのだ。

 予約した国立のドコモショップに10分遅れで着いたとき故障した携帯を持ってきていないことに気づいた。親父は今日ランチにおれを吉祥寺で一番上等な寿司屋に連れて行ってくれてそれはそれはうまかったが、最後に板前に「全部築地からの魚ですか？」と尋ねてしまった。親父の名誉のために訂正しておくと、豊洲である。こういう格好のつかないドジさは遺伝子の賜物といえるだろう。

 どうでもよくなったので携帯を持ってきていないことを担当者に伝えてドン引きさせてやろうと思ってずかずか店に入った。おれは東京に住んで4年目になるが、東京で本気で怒ったことは両手で足りるほどしかない。おそらく8回か9回だ。そのうち2回はドコモショップの店内で起きた。

 前もどこかで書いたがドコモショップの店員は間違いなくこの世で最も卑劣な存在だ。奴らの仕事はウソをつくことだ。しかもバレるウソを。あれは病気だ。全員がノルマをこなすために無茶なウソをつこうとする病気になっている。まともな人間がだれもいない。さっき国立のドコモショップにいたやつだって漏れなくそれだ。おれも詐欺みたいな生活を営んでいるのでわかる。詐欺を働くやつは、会話のレスポンスが異常にはやい。それから絶対に「はい」「いいえ」と断定しない。覚えておくといい。

 ママンに詐欺を働こうとしたので頭にきてドコモショップの店員に当たったことが2回ある。

 美舟で飲んでいたら震災の話題になって、仙台出身の菅野さんがいたから当時の話を聞いた。おれは東北出身の人にそのことを聞くのはなんとなく嫌だったので今までそういうことを質問したことはなかった。

 そうしたら菅野さんが真顔で「そのとき沿岸にいた人間は死んで、沿岸にいなかった人間は死ななかった」と言ったので爆笑してしまった。気を悪くしないでほしい、だって今まで聞いたどんな話より具体性に迫ったものだったから。あと、こういう喋り方は大好きだ。みんなこういう風に喋ってほしい、「雨が降ったところは地面が濡れて、雨が降らなかったところは濡れなかった。」こういう感じだ。

 おれはもちろん当時瀬戸内海を彷徨っていたので本当のことは知らないし想像することしかできない。違う。想像するための材料がないから想像することもできない。だから語るべきではない。その意味で菅野さんが言ったことが本当に今までで一番客観的だと思ったのだ。

 もうこれくらいでいいか？飲むので。高円寺に来てください

三鷹で頭割れたときの写真

『詩人と女たち』というどうしようもない本を読んでいたら、こういう一幕があった。

 チナスキーという作家のもとに手紙を送り続けていたファンの女がとうとう飛行機に乗ってチナスキーに会いにくるというので、空港で待っていたところ、お互いの姿を認めた二人の会話である。

「ミンディです」

「あなたがミンディでよかった」

「あなたがチナスキーでよかった」

 もっともキザな出会い方である。だが効果的だ。読者のみなさんも次はこれを真似してみてはいかがだろうか。

「あなたがユメカワさんでよかった」

「あなたがセトさんでよかった」

ってね。しかし、いつも完璧な相手が到着ロビーからやってくるとは限らない。その時は新しく新千歳空港行きのチケットを買ってやって送り返せばいいのだと思う。合理的だと思う。

 ハモニカ横丁はやはり最低な場所だ。吉祥寺という街がそもそもキナ臭くて退屈でアホで、中央特快が止まらないわけが伺えるのだけれど、そういうしょぼくれた吉祥寺の悪意を煮詰めたような通りがハモニカ横丁である。ここら一帯は手塚なんとかという奴と三浦なんとかいう奴が牛耳って運営している。三浦なんとかの本を読んだことがあるが本当にひどいレベルでつまらなかった。地方創生などの議論は現在こういうお金でしかものを語れない奴らによってなされているので一切耳を貸す必要はない。おれはアホなのでしょっちゅうハモニカ横丁の中へ入ってしまうがその度に嫌な気持ちになる。二度といくかと思う。だが昨日の夜も行ってしまった。もう二度といかん。唯一好きだった店で飲んでたら常連のおっさんがカウンターからなにやらおれのことを指して笑っているようなので、笑われるようなことなどひとつもしていないがずっと睨んでいたら目線を逸らしてまた誰かをネタにして仲間とバカ笑いしていた。白痴みたいな女が話しかけてきたが顔が好みだったから少し話した。カウンターにジョッキを残したままなにかを叫んでどこかに走っていった。そのあと別の白痴女がおっさんのズボンを下ろした。おっさんのトランクスが見えた。日本に銃刀法があって本当に良かった。こんな具合では誰もが銃の乱射で逮捕されてしまう。とにかくハモニカ横丁には銃殺されても仕方のないような白痴の女とでっぷりと肥えたおっさんしかいない。

 白痴の女と肥えた中年が一番嫌いかもしれない。みんな揃って穴に落ちてくれたらどれだけ幸せかと思う。そういう奴らが吉祥寺をダメにしていく。吉祥寺のことは好きなのに白痴の薄いリップの色と汚れたトランクスが吉祥寺を堕落させている。これはマジだ。うそだと思うなら一回見にくるといい。

 おれが好きでよく読んでいるブログを紹介しようと思う。

https://saganrisa.hatenablog.com

 あとシンガーズハイの内山とラジオを始めた。きいてもいいよ

 2年前にツイッターのアカウントを作ったときからなんとなくイズミという名前を使っている。「イズミ」というのは便利な名前だ。まず、「泉」と「和泉」の二つの読み方があり、苗字としてのイズミと名前としてのイズミがあり、男につける名前のイズミと女につける名前のイズミがある。英語にしても is me とこうなんか、なんかいいだろう？

 イズミでなければイルマという名前を名乗っていた。イルマは古い友人で8年間くらい引きこもっている。ちなみにイルマという名前はウソだ。イルマはスペイン人っぽさもありかっこいいから勝手にそう名付けただけだ。

日高屋とわたし

 日高屋でウーロン杯を飲んでいると自由だなと思う。

 自由。

 ここでいう「自由」というのは、連続性のない時間や空間のことを指している。日高屋には連続性がない。

 たとえば(今回はつるの剛士のブログぐらい改行が多い)、首を絞められて意識を飛ばしたことのあるひとならわかると思うが、親指で頸動脈を圧迫され、脳が酸欠により応答を停止するあの一瞬は、確かに気持ちがいい。意識の連続性から解放されるからだ。失神へと向かう数秒間は自意識から解放され、わずかながら自由な体験をする。

 自意識からの解放という面からいえば、クラブでキックの強いテクノに身を任せ規則的に身体を揺らしている時間もかなり自由だと言えるだろう。そういうクラブでは、精神は肉体を一定のリズムで揺らす機械に成り下がり、我々がただの喋れるサルだということに気付かせてくれる。肉体は動かし続けることに意味がある。

 快感というのはこの意味での「自由」と密に関係していると思う。意識が飛びかけることとクラブで踊り続けること、これらの要素は無論、射精にまつわるセックスにもある。いうまでもない。

 そんなことは何にでも言い換えられる。旅先の知らない土地で開放感を感じるのは意識下における全ての連続性から一時的に逸れている状態にあるからだ。

 このようなことを書きながら4杯目のウーロン杯を注文しているとやくざの爺さんが店に入ってきた。日高屋でタバコが吸えていた輝かしき栄光の時代(2020年4月以前)のどこかで一度おれはその爺さんに話しかけられたことがある。一人で奥の席に座ってぼうっとタバコを吸っていたら「おいガキ、今時マッチか。珍しいなガキ。」のようなことをだしぬけに言われたので横を向くとハットからシューズまで全身を白でキメた爺さんがいた。ぼうっとしていたので気が付かなかった。首に巻いた純金のネックレス以外全て純白の衣装を纏った爺さんだった。2、3冗談みたいな会話を済ませて席を立とうとしたのだが爺さんは永遠に喋り続けた。土建をやっているそうだ。おれはやくざと話した経験がなかったからどこまで喋っていいのか分からなかった。いや喋る必要はなかった。爺さんの目がお前の話を聞くつもりはないと語っていた。土地代だけで3億は下らない吉祥寺で一番高級な住宅街に住んでいる反社も日高屋に来る。ウーロン杯の氷が全て溶けきるまで武勇伝は続き、さすがに奢ってもらえるだろうと思ったら自分の分だけ(ばくだん炒め定食)払って帰っていった。次からはまず最初に金を出す意思があるのかを聞いてから臨もうと思った。

 やくざの爺さんがおれから一番遠い席に座ったことにほっとしながら友人と話をしているとまた隣の中年に話しかけられた。今日はなかなかついているみたいだ。餃子を奢ってくれるそうだったが、連れのお姉さんにたしなめられてしゅんとしていた。町田市みたいな二人だった。

 日高屋というのは関東でチェーン展開されている中華料理屋だ。飯の味は普通だが酒が不味い。日高屋の酒を美味しいなと思ったことなど一度もない。何度飲み直してみてもやはり不味い。

 グラスを開けるごとに邪悪な醸造アルコールのせいで頭はおかしくなっていきもしやこれはかなりいい酒なのではないか？と思い始める。おれがウーロン杯を飲み続けるのはその疑念がまだ残っているからだ。

 日高屋にいるやつで日高屋のことを中華料理屋だと思っている人間なんて一人もいないと思う。居酒屋ではないが飲食店ではない。おれは日高屋はサロンだと思っている。

 おれは日高屋はサロンだと思っている。これはかなり本質に近い指摘だ。なぜならおれは日本で一番日高屋にいるからだ。

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 イルマがやっているゲーム実況配信で知ったのだが、地元で高校生が溺死したらしい。弟の同級生だった。通夜に行ったらしい。同級生の死に顔を見るのはどういう気分なんだろうか。おれは知らない。弟のこともなにも知らない。しばらくまともに口を聞いていない。仲が悪いわけじゃなくて弟に興味がもてない。そんなもんか。自分に弟がいることすらしばしば忘れてしまい周りからは一人っ子だと思われている。おれには5歳下の弟がいる。顔は似ていない。

 サロン・日高屋吉祥寺南口店は吉祥寺駅の南口にある。様々な人間がいる。知らない人間がほとんどで、たまに知っているやつがいる。バイトリーダーの南川さんという女性がインドネシアや中国から出稼ぎにきたバイトを束ねている。たまに誰かから話しかけられたり絡まれたりする。色々な話をされる。

 それは脈絡のない話ばかりだった。様々な啓示だ。

 おまえは頭がいい。

 おまえは頭が悪い。

 金を稼いで結婚して子供を作って不倫をしろ。

 ジャズは退屈だ。ロックを聴け。

 たまに昔のことを思い出すんだ。

 きれいな顔だね。

 はじめまして。

 日高屋には連続性がない。居酒屋でも飯屋でもない。不安定な、差し込まれた空間だ。みんなおしゃべりで、独りで自由をしている。自由だなと思う。おれは吉祥寺の日高屋が好きだ。

 おれは4年間の大半の夜を日高屋吉祥寺南口店に費やしてしまった。大学なんかよりずっといる。そのせいで立ち行かなくなりつつある。日高屋でわけのわからん本を読んでる暇があったらちゃんと大学へ通って就活をしておくべきだったのかもしれない。なにもわからない。受け身の姿勢をやめて、おれも隣の人に話しかけてみるべきなのかもしれない。今夜も日高屋吉祥寺南口店にいる。日高屋においでよ

レターパックで花束おくれ

 スカしたジャケット、スカジャンを羽織っている。ヨコヤマさんから譲り受けたものだ。ヨコヤマさんは初老の行政書士で埼玉の狭山市という街に暮らしている。事務所兼自宅の裏にはまずまずの広さの畑がありサツマイモとジャガイモを栽培している。そこで採れたサツマイモをおれに見せてくれたヨコヤマさんの笑顔は、佐山の太陽のように柔和でよかった。蕎麦湯を注いでいると朝吐いたゲロみたいな色だなと思う。

(出典) 論理ちゃん @ikil_kiLLa_ 

 ちなみにおれはいま左手にミニ・クーパーの鍵、右手に花束を抱えている。机に飾ると綺麗だなと思ったからだ。ヨコヤマさんはジャケットに加えて草津にある別荘もおれにくれた。ヨコヤマさんとは愛人関係ではない。気前がものすごく、いいのだ。

 宮島のアナゴ料理屋で2日間だけ働いたことがある。高1の秋だったかと思う。宮島へは、宮島口という港からフェリーに乗って行く。ちなみにフェリーはJRの管轄下におかれている。アナゴ料理屋は双子の中年が二人で経営していた。顔が同じ方の双子だ。おれの親友にも男の双子がいて、お互い仲良くやっている。仲良くやるしかないのかもしれない。野生下ならたぶん憎み合い、殺し合うことになるからだ。

 アナゴ料理屋に昼飯を食いにきた観光客たちはみな、笑顔で入店し、怒った顔で退店していった。原因はいくつか考えられる。

・アナゴ丼の提供に30分ほどかかるから。

・汚れた食器が廊下中にあふれているから。

・おれがナスの天ぷらを床に落としてしまったとき、社員がそのナスを拾ってふたたび天丼の上に乗せていたから。

・店内に双子の中年男性がいるから。

・料理が美味しくない場合があるから。

 思い出したことがあるのだが、その二日間は前付き合っていた彼女と一緒に働いていた。きもいかもしれない。嘘だ、かわいらしい。あまりにも酷すぎるバイト環境だったので誰もいない二階の座敷で彼女とキスをしたことが一度あった。

 ヨコヤマさんから貰った別荘の話もしよう。草津の静かなゴルフ場の近くにあって、今のところ毎日が霧雨で草木が露で濡れている。窓から見えるその質感はとても綺麗だ。

 今朝撮った写真だ。vscoでちょちょいと加工した。ちなみにおれはvscoの公式アカウントからDMがきたこともある。写真がバズったからだ。なのでおれのアカウントは訳のわからん外国人にたくさんフォローされている。

 つらつら書いてたらガールフレンドから電話がかかってきた。LINEを交換していないので純正の電話アプリからかかってきた。ガールフレンドの声めちゃかわいい。やばい。よしよしして〜〜〜〜〜。温泉のチケットが余ってるからこんど一緒に草津いこ〜ね〜って話した。ありがとうございました。

 おれはなんでもかんでも身の回りのことを喋ったり書いたりするが、それでうまくやれているのでなんら問題はないと思う。自分のことを開示しない人間はそういうやつら同士でつるめばいいし、喫煙者専用の居酒屋があってしかるべきだしそういうのはちゃんと区切ったほうがいい。あとおれは大麻の話をする日本人はマジでキモいと思っている。法律で禁止されていることをやって気持ち良くなっているやつらはちゃんと法律で裁かれるべきである。日本のわけわからんダサいヒップホップとか聴いて踊ってるやつらもそれなりに反省したほうがいいと思う。ジャズで身体を揺らせないやつがヒップホップで踊るのは完全に間違っている。ワンピース読んだことないのにワンピースをいじって笑いを誘うやつくらい信用ならない。

 ジャズで踊れたほうがいい。どう考えてもそれは正しい。だからもしおれの意見を聞いてジャズで踊りたいな〜と感じた人は知り合いの音楽オタクにおすすめの音源をきいてみればいい。ジャズ喫茶には行かなくていい。ジャズ喫茶に入って後悔しなかったことがない。ジャズ喫茶は最悪の老害が最悪のジャズを最悪のコーヒーで割って提供する最恐スポットだ。そんな場所へ行くなら吉祥寺の日高屋でウーロン杯を2つずつ注文したほうがいい。

Wig Wise

• デューク・エリントン
• ジャズ
• ¥255
• 

• provided courtesy of iTunes

 高校時代とても仲が良かった女の友達が最近結婚することになって寂しいな〜と思っている。男の友達と同じ無礼さで関わることのできる女性は貴重だなと思う。ちなみにおれは結婚相手の旦那から嫌われているらしい。いいぞ、嫌ってくれ。ちなみにこれは嘘だ。

 れんさんが「親しい友達」のリストにおれを追加してくれたのは媒体の軽薄さとしては皮肉だが仲良くなれたのかもしれないのでよかった。

 天皇にチーズバーガー食わせたらどんな反応をするのか見てみたい。泡吹いてぶっ倒れるんじゃないですかね。だってあの家普段和食ばっかり食ってるんでしょ。天皇にダブルチーズバーガーとすた丼と武道家ばっか食わせて4年で死なせて令和を6年で終わらせたい。

𝙕𝙊𝙈𝘽𝙄𝙀 🧟‍♀️ 𝘿𝘼𝙔𝙇𝙄𝙂𝙃𝙏 ☀️

 カミュの『異邦人』を再読した。パーフェクトな小説だ。いまのところ完璧に近い。これからも何度と読み直しそのたびにいたく感動するだろう。再読したきっかけはある日の夕方、衝動的に再び異邦人のストーリーを読み込みたくなったのだ。いくら本棚を探しても見つからなかった。代わりにプーチンのワッペンが二枚出てきた。投げ捨てた。思い出した、どうしても酒代が足りない夜に大量に本をブックオフに持ち込んだ折手放してしまったのだ。本を売って飲んだ酒はうまかった。

 『異邦人』とは、真紅の血と太陽の物語である。太陽がキーワードだ。太陽というモチーフは大好きだ。月を見る場合、別の国の誰かが観察している月の姿は同じだ。太陽は違う。日本の太陽と地中海の太陽はどれくらいかけ離れた恒星にみえるのだろうか。アルジェの太陽に比べれば日本の太陽なんてきっと仄かなものなのだろう。アルジェの太陽にいつか焼かれたいと思う。麻の開襟シャツを着て、裸足でビーチに立っていたい。殺したくなるのだろうか？

 とはいえ、つい先ほどまで日本も夏ではあった。みなさんはどんな夏を過ごしていただろうか？夏に一回もブログを書かなかった。ブログというか、まとまった文章をひとつも書かなかったと思う。それは周りの人間も同じように思われる。色々なことがあり色々な人とすれ違ったが、それは書くべきではないのかもしれない。そういうことなのかも。

 思い出した。『異邦人』を読み直そうと感じたのは、山形に行った後のことだ。

2020年8月2日の庄内は太陽の下にあった。まさしく真夏日だった。盆地に包まれた平野の中をパジェロで走っていた。箱庭で遭難している登場人物を演じているようだなと思った。盆地という地形にはそういった効果がある。鳥海山、羽黒山、月山や湯殿山というおれにとってほとんど馴染みのない、遠い山脈の壁によって幽閉されていた。太陽光の強度を遮るビルや工場はまばらで、地表は山の裾野の境界面まで田園と果樹林でたっぷりと満たされていた。直線的な太陽の熱で髪の毛がチリチリと焦げ、青いアロハシャツが小川に溶けていくみたいだった。パジェロは柔らかく融解し小舟に姿を変えていった。出口のない緑色の内陸湖を彷徨う幽霊船のようにも思えた。これがどういうことかというと、また脳味噌が溶けていたのだ。

 稲(つや姫)のグリーンと空のブルーがドロドロに混ざり出した視界の中で、ふとムルソーのことを思い出した。『異邦人』の主人公で、太陽によって人を殺した。ムルソーは太陽のせいで殺人をした。これは多くの場合に誤解されているだろうが、ムルソーは本当に太陽が眩しかったから人を殺したのだ。比喩を含んでいるのではない、熱中症でおかしくなってもいない。いや、ムルソーは狂気と最も遠い場所にいると断言できる。彼の振る舞いは完全に整理された理論に基づいている。そしてその理論は正確に一般化されていて、A4のコピー用紙一枚に収まってしまうだろう。

 おれは、なぜ太陽が眩しいと人を殺すのかそのとき一瞬だけ悟ってしまったのだ。だがそれは溶けた脳味噌が見せたイメージで、おれはやはり狂気に縋るよりほかに方法がなく、人を殺すことはできないのかと感じた。

 みたいなことをそのあとすぐに書き出すこともできた。このようなことに関係なく、山形の夏は本当に、本当に素晴らしかった。気が許せばたくさんの写真で山形の夏を紹介したかったが、気が許さないのでそれは不可能だった。やはり移動と、それに付随する観光は直接自分で体験した方がいい。あなたも興味があればぜひ行ってみるといい。鶴岡と酒田は夏が似合うと思う。来年になったら新潟から羽越本線に乗って行くといい。

異邦人 (新潮文庫)

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PASSION BLUE(CD)

 東京に帰る夜刺身定食を食べながら咲月に結婚しようと言った。咲月が笑ってくれなかったらどうしようと思ったが笑ってくれたからよかった。本当に結婚したいからだ。

 言いたいことは以上で、金曜なので酒を飲みに吉祥寺の夜に繰り出したいので以上になる。

自閉症と学ぶクラブマナー

1:みんなでクラブに行かない

友人と一々会話を挟まないと落ち着かないならミュージックバーに行くことをお勧めします。クラブは社交の心を閉じ込めて、音楽で踊る場所です。

2:スマホを触らない

楽しいことをインターネットで共有するということは、楽しんでいないということです。飽きたのなら無理にフロアに居座ることはありません。帰ったほうがいいでしょう。とにかく身体を規則的に動かしましょう。

3:お酒は飲まなくてもいい

とにかく身体を規則的に動かしていれば、アルコールに頼らずとも自然に加速します。液体が入った容器をもらうと、容器について意識するようになり、うまく踊れない場合があります。一方で、自閉症的音楽と相性が良いお酒もまた存在します。

4:普通の服を着る

スパンコールを身に纏ったNPCは目に着きます。クラブにおける主役はあくまでも、漆黒に象られたサウンドシステム・連続性を保ったまま即時に文脈を繋ぐDJです。自閉の殻にくるまった皆さんは着膨れして見えます。半袖のタイトでもルーズでもない、綿のTシャツに色落ちしたデニム、アディダスのローカットくらいが悪目立ちしないでしょう。

5:ドラムンベースに対応する

動かせるようにしておきましょう。

6:帰っていい

マンネリを感じているのに結局始発まで粘るのは理性的ですが賢明ではありません。首筋の冷えた汗が気になってきたならタクシーに乗って帰りましょう。適当に入ったら外国人観光客用の接待箱だったり、楽しめないジャンルの日だったなら、すぐに出るべきです。

後半へ続く

ユーモアと加速

よく、面白い人ですねと言われる。

 面白い人ですねと他人から言われたならば危機感を持つべきだ。様々な危機感だ。

(出典) ‪@sayonara_green ‬

 まず第一に、面白さとは基本的に暴力を孕んでいる。

 面白さとは、「おかしい」「変わっている」という逸脱の結果にある。つまり普通のことは面白くもつまらなくもない。皆さんがどういう環境で育ってきたか知らないが、日本においておかしいこと、変わっていることは美徳ではない。普通であればあるほど「良い」。もちろん今のは皮肉だ。おれに断言させてもらえば、「面白い」人間は普通ではない。異常なのだ。

 すると当然このような疑問が発生する。「だれが面白いかどうかを決めるのか」。冒頭に戻って、たとえばあなたが他人から面白いねと褒められたとする。するとたちどころに逸脱が発生する。どんな悪意がなくてもだ。なぜならば、他人から、普通ではない、変だ。というジャッジを下されたからだ。これは暴力のはじまりだ。無意識の暴力である。

 おれは他人からユーモアを褒められてもあまり嬉しくない。嬉しいと思う人もいるだろう。それは自由だ。おれの場合は承認を司る自意識がアル中の肝臓みたいに肥大化しているので嬉しくないのだ。そもそも、「君面白いね」なんて軽々しくいえるやつは必ず心のどこかでは自分の方が面白いと思っている。その余裕と自信からくる言葉だ。さらにいえば(あーそういう系統のユーモアね、はいはい履修済み、おれのと似てるし笑えるけど理解できちゃったわ)という思考の筋道を経たうえでの「君面白いね」なのだ。全く不愉快だ。前述した無意識に行われる暴力ならまだマシだ。こちらはわざとユーモアを使って差別と思考停止を起こしている。

 そう、まさに差別的なのだ。差別とはたいてい多数派が起こすものだ。ここでいう多数派とは面白くない普通の日本人だ。悪意を持って他人に「面白い」の烙印を押す場合、そいつらは平気で多数派に回る。“面白くない普通の日本人“なんて存在しないのに。そいつらが軽々しくユーモアのスティグマを刻んでいるのだ。これが暴力じゃなかったらなんなんだ。

 ピエロみたいなやつ、皆さんの周りにもいるでしょう。必死に道化とサービスを振り撒いて。現代ならホアキン・フェニックス、それ以前だと大庭葉蔵がそれに当てはまる。おれ自身もそういうところがある。面白い人間は、面白ければそれでいいのだ。その場その場で、芸をやって、笑われて投げ銭を貰えばそれでオッケー。ピエロが普通に暮らしてるとこなんて誰も興味ないでしょう。面白くないピエロは存在しないからだ。端数を切り捨てる感覚。それが思考停止。

 なんだかすごく怒ってる人みたいな文章になってるな。まったく怒ってないです。やはりなんといってもブログのいいところは文脈をブチ壊してもあまり顰蹙を買わないことだろう。いまからブチ壊します。アパートの向かいの部屋にひとりで住んでる女性が毎晩家に帰ってくるときに誰もいないであろうリビングに向かって「ただいま~」って言ってから扉閉めるのが聞こえてきて、なんかいいなという旨をツイートしたら知らないアカウントから「それ空き巣とかストーカー防止の対策ですね‼️」ってリプライが来て一気に最悪な気分になって全部のツイート削除した。いや......余韻を愛せよ......と思った。そういうことありますよね。余韻を愛せる人とそうでない人。

 銀閣寺行ったことある人ならわかると思うんですけど、中庭に砂でできたデカいプリンみたいなのあるじゃないですか。子供だったらはしゃぎますよね。うわ〜プリンじゃん！！こんなん食いてえなあ笑 ってね。数年後かにまた京都に行く機会があれば、そこで知ればいいんですよ。「ふむふむ、これは向月台といって、この上に座って月を眺めていたのだな。」っつって。遅れてきた連れの女にでも蘊蓄たれれるでしょう。そういうのでいいんじゃないですかね。どうですか？そろそろユーモアの話に戻ってもええどすか？

 前半では存在しない多数派から「面白い」を規定されることの暴力性についてみてきたが、次は「面白さ」が二次的に引き起こす暴力について考えてみる。

 ユーモアとは、しばしば特権的である。言い換えると、面白ければ許される場合が存在する。

 おれはいわゆる関西のノリが苦手だ。流石に面と向かって「で？オチは？」と言われたことはないが、冗談でもそんなことを言われたらトラウマになると思う。会話におけるオチ至上主義みたいなのにはついていけない。いや地域性で一括りにするのは間違っているが、純然たる関西人の方々に染みついているナショナリティとしてのノリではなく、それがバラエティ番組で複製された結果皆さんがよくやっている関西人ごっこのことを苦手だと言っている。

 たとえば、松本人志とか宮迫などの古い時代の芸人ではもうあまり笑えない。ひな壇で若手芸人がトーク頑張ってるときに宮迫あたりが「いやちょっと待って......！そのネクタイどこで売ってん？」みたいなので強制的にオチを生成して1ターン終了。みたいなのには辟易させられる。トークが上手くない若手を助けるためにやってるんだよとかそういうことじゃない。その手法を画面の外で真似する奴が大量に発生するのがクソすぎるのだ。ユーモアにはレベルがあって、これは最底辺のユーモアだ。もはやユーモアですらない。あなたが何かのプレゼンの途中で噛んだり資料を読み間違えたときにそれをゴミ野郎が指摘してみんなが笑ってるようなもんだよ。おかしいでしょ。ムカついてもそいつはこういうだろう「いや冗談だよ笑」って。

 なにも笑えないのだが、そういうユーモアは確かに存在する。ゴミみたいなユーモアに通り魔的に襲われても、周囲が許してしまう場合があるのだ。

 あとおれは落ち込んだり泣いたりしてる人に対して無理にユーモアで笑わせようとする人間を見るとなんだが背筋が寒くなる。これは個人の感想です。

 それと他人のコンプレックスを笑いに変えるのはとんでもなく低俗な発明でいますぐ辞めるべきだが、そもそも笑いというのが、巨大な暴力を発生させる装置であることに気付いた。

 集中力がなくなってきた。

 おれはピエロ気質なのであ〜こいつも無理してるな〜ってやつは特徴でわかるのだが、本当、無理しないほうがいいよ。笑われるのきついでしょ。もう普通に喋れなくなっちゃったよね。わかるよ。変に会話を加速させなくていいんですよ。そういうの見かけると心がギュってなるんで、ユーモアから自由になってほしいな。

 今回は以上です。もっと言及したかったな。最近ブログ流行ってますね。おれはみなさんのツイートやストーリーよりも長めの文章が読みたいですね。これを(？)機会にみんなでブログやりませんか。言及は大事です。

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