二人は曖昧なキスをして終了

 財布を落とした。クリスマスイブは大島さんについていって銀座ライオンで昼飯を食わせてもらった。モンブランまで買ってくれた。モンブランは翌朝井上が全部食べやがった。

  久しぶりに川島と会った。川島のことは前にも書いた気がする。川島にぶん殴られた。よく覚えていない。兵庫の酒を飲んだ。

 学部の友達が作った香水を買った。クリスマスにかこつけて好きな子にあげることにした。喜んでくれた。その香水とアップの自撮りがメールで送られてきた。かなり嬉しい。このあいだ顔を殴った女がおれのラインの名前を「浮かれポンチ」にしていた。実際にこのところおれは相当浮かれているのでその通りだ。ポンチでもチンポでも好きにやってください。

 中華が食べ足りない。好きな子とキスできて浮かれポンチのおれだが唯一満足できてないのは中華料理を全然食べれてないということだ。明日には地元に帰らなきゃいけない。帰る前にもう一度吉祥寺の中華街に行きたいが、そう、財布がないのだ。キャッシュカードもクレカも免許証もない。

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(出典) 論理ちゃん ‪@ikil_kiLLa_ ‬

 

 つまらない事実を告白しよう。話すことも書くべきことももう何もない。十分満足だ。記号化される言語についてずっと考えている。そう、考えてはいる。考えるモードの身体は、栓を抜かれた風呂の残り湯の最後が渦を加速させて排水溝へ抜かれていくように純度を保ったまま回転している。むしろ考えすぎで、なんの好機も望めないような論理のゲームを手のひらで転がしているうちに思考と酒が並々注がれたとっくりはとっかえひっかえされ、他人からはクソの山としか見えない丁寧な泥濘がおれ自身を満足させてしまっているのだ。

 記号化される言語。考えたことを口に出した時点で100%正確な描写ではなくなるのだが、他者がそれをさらに間違った解釈で受け取ることでことばはズレていき、ことばでの相互理解などは不可能になる。これは同じ日本語を使う民族同士、生活レベルが似たもの同士、東京で暮らしているガキ同士だから言語以外の要素がどうしても似通ってしまい、ついつい言葉を信用してしまう我々への残念なお知らせだ。

 ウィトゲンシュタインの指摘を待つまでもなく、この世界のコトはこの世界にあるモノでしか説明することができない。「この世界」というのは任意の対象であって、「日本」でも「青色」でも「タコ焼き」でもなんでも構わない。

 【言語】とはつまりこの世界のコトやモノを理解するために開発されたツールなのだが、日本や青色やタコ焼きを言語によって定義することは可能でも、「好き」だとか「悪い」だとか「絶対」...「正しさ」「キモい」「エモい」などなどはこの世界に存在しないモノなので、その言語を使用する我々人間たちに依存するほかないのだ。

 そうすると上記の通りことばでの相互理解が無理な我々が当然そんなあやふやな言語を使ってわかり合おうとすること自体おかしいことだとわかる。おれはさっきから少し考えたら誰でも理解できることしか書いてないけど、案外みんな言語を信用し、依存しているから色々面倒な事態になっているのだ

  話すことや書くことがないのは、言語の脆さに気付いて、言語を信用しなくなってしまったからだ。これは失語症ともいえるのかもね。

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 これを書き留めておいたらもう大晦日になってしまった。

 今年を振り返るタイミングで気付いて驚愕したのだが、2019年4月~8月までの記憶が丸々消えていた。友人に確認しようにも、その頃大学以外ではずっと家にひとりで引きこもっていたことだけは確かなので知りようがない。っていうか思い出すべき過去なんてないか。ひとりで永遠に論理ゲームをやっていた。

 9月、キューバ旅行から帰ってきたあたりで、生活を徐々に規定するようになってきた。大学を休むのはやめて、授業が終わった後は本屋に行き、服はアディダスだけで買い、トラックスーツの3本線を身体に染み込ませ、紀伊國屋で飯や生活用品を買い、バイトはせずに定期的に大学の先輩と寝て、夕飯や酒代を出してもらう。たいてい井の頭公園にいたがそれ以上に日高屋にいた。少ない友人とだけ遊んでいた。

 車で渋谷のクラブまでいってゆる~くシラフのまま踊り、夜明けになったら環八を走って吉祥寺へ帰るのがなんか楽しかった。最初から最後までひとりで、会話は追加でレッドブルを頼むときだけ。冷たい音楽だけを選んでいた。hardvapourとか。

 連絡が取れなくなって東北に帰った、好きな子が急にメールをよこしてきたのは10月、渋谷のコンタクトでインダストリアルを聴いていたときだ。

 おれはいつからかこの子のことが本当に好きになっていて、「ままならない」状態が続いている。「本当に好き」って、全然表現しきれてないな。なんだろうな、今読んでいるあなたがたとえ人生の全てを捧げてもめぐり会えないくらい素敵で貴重な人だ。もしもあなたがそういう人に出会えたとしたらそれからの人生はすべて素晴らしいものになるだろうし、何もかもがうまくいくだろう。

 今月に東北で会った時、好きな子は黒くて綺麗な長い髪を短く切り落としていた。おれは綺麗な黒でしなやかに伸びる彼女の髪の毛が大好きだったけど、ショートにしても可愛かった。これに関しては、彼女がどんな見た目になっても関係なく好きだ。髪の毛も白い肌も長い睫毛も目尻も、喋り方もいつも着てるベージュのトレンチコートもSNSをやってないことも(かなり大きい)絵が描けることも大好きだけどおれは彼女の美しい魂が好きだ。

 純粋で無垢な魂が好きです。

 

 照れるな。今年もあと5時間で終わりですね。虫みたいを読んでくれてる方々、一年間ありがとうございました。読んでくれてる人たちが大好きです。他の媒体ではこういうこと一切言わないので希少性を感じてください。来年は週一くらいでブログあげれたらいいですね。そろそろクソ親戚共が集う宴会場に戻ろうと思います。親父の実家は九州なので黒霧島をストレートでいかにゃなりません。おれは焼酎が好きじゃあありません。ついでにいうと実家の雰囲気も祖父のことも九州自体も苦手です。はやくおれに東北の日本酒を持ってきてください。では